★一時、カレー作りに凝っていました。
男が料理に懲り出すと、やたらウンチクを並べ立て周囲のひんしゅくをかうなんてことが多いですが、しかし、この時凝ったのは「ラーメン屋さんのカレー」あるいは「おそば屋さんのカレー」に相当する、非常にチープな味の追求でした。
「チープ」とは言っても、昔々、日本の家庭のカレーライス、いや「ライスカレー」と呼ばれていたカレーは、だいたいこの味だったと言ってよいのです。特にウチの場合には、亡くなった祖母が、時折り作ってくれるカレーがこの味だったので、私にとってはとても懐かしいメニューなのです。
ところで「ラーメン屋さんのカレー」と「おそば屋さんのカレー」ですが、この2種類は同じようでいて微妙な違いがあります。
まず「ラーメン屋さんのカレー」ですが、多めの油で小麦粉とカレー粉を炒めてルーを作り、ダシは鶏ガラ、味付けは塩と砂糖のみと言うものです。小麦粉の中に含まれるグルテンの作用で「とろみ」は自然につきます。で、これが昔懐かしい「ライスカレー」となるわけです。
これに対し「おそば屋さんのカレー」にはかつおダシが使われており、味付けは主に醤油とみりん。そしてとろみは片栗粉でつけます。いわゆるカレー南蛮に使われているものと同じです。こちらは「小麦粉カレー」を参考に、おそば屋さんなりにアレンジしたものと思われます。
さらに、おそば屋さんの中には、皿で食べるカレーを「カレーライス」、どんぶりで食べるカレーを「カレー丼」と分けて、二種類出している所もあります。調べてみると、前者は「小麦粉カレー」、後者は「かつおダシカレー」と作り分けていることが分かりました。
さて、あれこれ調べて、ようやくレシピが分かって来たところで、実習に取りかかることにしたのですが、買って来たS&Bのカレー粉缶を見てがく然としました(大げさか?)。なんと缶の側面には、レシピのいっさいがっさいが説明されているでは有りませんか・・
けっきょくは、その能書きを見ながらの調理となったわけですが、小麦粉を炒めていると次第に色が付いて粘りが出て来たりして、そんなことにけっこう感動しました。
そうしてルーを作り、そこからは普通に肉や野菜を加えて煮込みました。そして数十分、想い通りのチープ?で懐かしいカレーの出来上がりとなりました。まぎれも無い、私の子供の頃の味です。
暑い夏には激辛で本格的な「カリー」もいいですが、ちょっと飽きて来た頃に、懐かしい「ライスカレー」の味もオツだと想いますよ。
出来上がりに満足すると、さらに「実験」をしてみたくなりました。私の親戚に料理屋などしていた叔父がいるのですが、以前この叔父が遊びに来た時に、市販のカレールーに「デミグラスソース」を加えただけのモノを夕食に出したことが有りました。すると味にうるさい叔父が「これ美味いなあ!どうやって作ったんだ?」とやたら驚いたことが有ったんです。
そんな経験が有ったので、チープな小麦粉カレーに「デミグラスソース」を加えたらどなるだろう?と言う探究心が湧き、試してみることにしました。その結果は?、なんと市販のカレールーそっくりの味になってしまったのです。
「なるほど、メーカーのカレールーって、こんな感じで作ってたのか・・」と思わず唸りましたね。
これに、ブイヨンとブーケガルニ、トマトピューレ、ショーガ、すりおろしリンゴなどを加えてもさらに美味しくなるし、ひき肉にして「ガラムマサラ」などの調味料を多く加えると、少しだけインド風?の味にも近くなります。
ただ、味は良くなりますが、印象はいつも食べてる普通の家庭カレーでしかなく、ちょっと物足りない感じもしました。やはり「チープ(ジャンク?)」だからこそ楽しめる味、と言うのも有るような気がします。
ところで、日本のカレーはインドから伝わったものではないようです。ヨーロッパ、主にイギリスからだそうです。かつてインドがイギリスの植民地だった頃、インド料理がイギリスに伝わり、ヨーロッパで流行しました。そしてあるメーカーが、家庭でも簡単にインド風料理が作れるようにと、数種類の香辛料をブレンドして販売したものが、いわゆる「カレー粉」だったと言うわけです。
日本に伝わって来たのは、そのヨーロッパ産の「カレー粉」なんですね。「恐らくその輸入業者はS&B食品に違いない」なんて勝手に想像しましたが、あとで調べでみたら、日本にカレーが伝わったのは「明治5年」、日本の「114食品」と言う会社が、イギリスの「C&Bカレー粉」を輸入したのが始まりなんだそうです。
このようにして、インド料理が巡り巡って、日本で「カレーライス」と言う国民食として花開いたわけなんですが、つまり、日本のカレーライスと言うのは、インド風ではなくヨーロッパ風、いわゆる「洋食」と考えるのが正しいのです。だから「デミグラスソース」を加えたとたん、ふだん食べ慣れてる味に近づいてしまったと言うわけだったのですね。
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