★ある野球ノンフィクションの本を読んでいたとき、こんな記述があったのを覚えています。(何の本だったか忘れてしまったが・・)。
著者がアメリカを訪ねて野球観戦する人々を描写しています。すると、地元のチームがリードされている場面で、1塁に出たランナーが盗塁を試みるのです。しかしキャッチャーからの送球が素晴らしく、ランナーはタッチアウトされてしまいます。
・・が、これを見た地元ファンたちは、ガッカリしながらも「勇気あるプレーだった」と、小さな拍手を送るのです。
そしてその姿を目の当たりにした著者は感動し、「盗塁」が本来どんなプレーなのかを初めて知ることになります。「盗塁」とは、むしろリードされているチームが、起死回生を狙って果敢に試みる「勇気あるプレー」だったのです。
これが日本ならどうでしょう。どちらかと言えば、リードしている方のチームが、押せ押せの勢いに乗って仕掛けるプレーだと思われてないでしょうか?。
つまり、失敗してもリードしているからとりあえずは安心、逆に成功すれば追加点が期待出来るし、と言うわけです。もしリードされている場面で失敗しようものなら、「暴走、罰金もの!」なんてことになり、ファンからも「あいつ野球知ってんのか?」なんて罵声が飛んで来そうです。
こんな風に「日本野球」と「アメリカ野球」では考え方に違いがあるようなのですが、今回、イチロー選手が初の野手として渡米しメジャーで活躍するようになってからは、さらに我々はいろいろな「本場の考え方」を知ることになりました。
たとえば、マリナーズが大量リードしている場面でイチロー選手が盗塁をした時、なんと味方であるはずの地元ファンからブーイングが起こり、公式記録上も盗塁として認めない、なんてことが起こりました。このことは、古くからメジャー好きだった僕も初めて知りました。盗塁したのに盗塁にならないんですよね。
ようするに、大量リードしているチームが盗塁をすると言うことは、傷ついて倒れた相手をさらに足で踏みつけるような卑怯な行為、だと言うのです。
なるほど、今まで日本野球で育って来た我々は、大いなる勘違いをしていたようです。盗塁とはリードしているチームが勢いに乗ってやるものなのだと・・。そうやって、徹底的に、完膚無きまでに相手を叩きのめすことが勝負師の心得であると・・
「ベースボール」は「日本野球」とは違い、そうではそうではないんですね。
「勇気」を必要としない攻撃はしてはならない
これが大前提なのです。大量リードしているチームの選手は、勝利以上に相手を傷つけるプレーをしてはならないのです。そしてそれらは「暗黙のルール」と呼ばれ、選手だけでなく、ファンもその精神を持ってゲームを観戦しているのです。
・・で、思ったんですが、この考え方と言うのはですね、むしろ「草野球」において大切だと思うのですよ。
草野球と言うのはあくまで親善試合でありまして、選手全員でお金を出し合い、グランドを取り、時間をやり繰りして、みんなで休日を楽しもう、と言う行為です。そこに、相手を傷つけてまで勝敗にこだわるプレーが果たして必要なのかと言う疑問です。
みんなも経験あるでしょう。大量リードされている草野球チームのバッテリーは、1アウト、いや1ストライク取るのにも必死で、ランナーのことなど考えている余裕はありません。そこへ、ほとんど無警戒の状況で盗塁をして、それはそんなに価値がある走塁なんでしょうか?
僕は最近、それはどうも違うなって気がしているんです。ただでさえ草野球の盗塁阻止は難しく、ランナー絶対有利なんです。そこへ無警戒となれば、走り放題になってしまいます。となると、それは正確には「盗塁」とは言えないんじゃないですか? 初めから塁が与えられているようなもので、盗んだって感じはしませんよね。
そう思うと「なるほど、確かにこれを盗塁と記録するのはおかしい」と、メジャーの言い分もわかるような気がして来るのです。メジャーでは、大量リードされている側の盗塁も、無警戒中の走塁と言うことで、「盗塁と記録されない」のです。
なので、これからゴブリンズの試合でもメジャー流にしようかと思います。もしもゴブリンズが10点以上の差をつけてリードしたら、それ以降は盗塁しても盗塁として記録しません。もちろん走ってもかまわないし、それで得点してもかまいません。でも記録上「盗塁」にはなりませんよ、ってことです。
でも、打つのは仕方ないです。相手投手がどんなにボロボロになっても、打てるだけ打つしかありません。もしワザと空振りするようなマネをしたら、逆に、相手投手には屈辱的な行為として写り、非常に嫌な気分にさせることになりますから。
同じ理由で「隠し球」もやらない方がいいですね。だいたい、ルール上、隠し球と言うプレーは存在しません。言わばルールの隙間から生まれた「バグ」みたいなものなんですね。だから、そんなちっぽけなプレーはやめましょう。
まあ、ランナーが自ら油断して、結果的に隠し球っぽくなってしまったら仕方ないですが、野手が故意にランナーをはめようとするのはマズいですね。特に大量リードのチームがやるのはいけません。
とにかく勝つにしても、相手が後味良く感じるような勝ち方をすること、それが大事です。それを心がけることによって「あのチームとは、またぜひ対戦したい」と言う気持が芽生え、円滑な球団運営へと結び付くのです。誘っても誘っても「あのチームはなあ・・」と、断られるようになってしまったら、草野球チームとしてはお終いです。
もちろんゴブリンズはよく敗けるチームなので、だいたい分かってますよね。敗戦した時にどれだけ悔しい思いをするか。それに追い打ちをかけるような屈辱的なプレーをされた時に、どれくらい相手に憎しみを抱くものか。
そう言うプレーをゴブリンズがしないようにするためには、「勇気を必要としない攻撃をしてはならない」、この言葉を肝に命じて試合に臨むことにしましょう。
注・ただし何でもかんでも「アメリカ流が良い」と言うわけではありません。スポーツとは、それが生まれた国の「文化の一部」である、と言いたいわけなのです。
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