スキップしてメイン コンテンツに移動

カレー専門店「ボルツ」との出会いと別れ

★このごろ、草野球仲間とゲーム後にカレーを食べる機会が増えたのですが、色んな店に入るたび、ずいぶん美味しいカレー屋さんが増えたなあ、と思ってしまいます。

特にインド人やネパール人が調理する、「ナン」を浸して食べる本場のカレーは、かつては、都心まで出なければ有りつけませんでしたが、今では、郊外の商店街でも見かけるようになり、「こんなところでも食べられるようになったのかあ」と、感慨ひとしおです。

思い返してみれば、その昔、もう30年以上前になりますか?、当時、カレー好きなら誰もが知っていた、「ボルツ」と言う、東京で一世を風靡したカレー専門のチェーン店が有りました。ある時期、親会社が撤退したことから店舗数が激減、現在では、味を継承した店がわずかに残っているだけのようですが・・

ネット調べでは、どうやら発祥の地は渋谷だったそうで、1970年代に設立され、1980〜90年には全盛期を迎え、都心の色んな街にチェーン店が出店されたそうです。かつて流行した「辛さ◯倍カレー」の元祖のお店でもあります。

それまで有名カレーと言えば「新宿中村屋」のカレーだったでしょうか。今ではすっかりご無沙汰ですが、印象としては「すごく美味しい西欧風カレー」だった気がします。ホームページには「純インド風カレー」と記されてますが、あの時の味のままならば、スパイシーではあるが、やはり本場インド風とは違うと思います。

今や国民食とも言える「カレーライス」ですが、元々は英国から伝わったものだそうです。インドが英国の植民地だったころ、インド料理に魅了されたイギリス人が、母国でも簡単に作れるようにと、インド産の香辛料をブレンドして粉状にし、缶詰にしたのが始まりだそうです。

それが「カレー粉」として日本に伝わり、さらに小麦粉と油を混ぜて固め、「カレー・ルー」として売り出したことで爆発的に広まったらしいのです。つまり、日本人が大好きな「カレーライス」とは、イギリスを経由してきた「西欧風」であって、「インド風」では無いと言うことになります。

と言うことで、「新宿中村屋のカレー」はとても美味しいけれど、やはり西欧風の極上美味しいヤツって感じで、「インド風」とはどこか違う。「いつか本物のインドカレーを食べてみたい」と願っていた僕には、だんだんと飽き足らない味になって行ったのです。そうして、色んなカレー屋さんを食べ歩くようになり、ようやく「これは!」と見つけたのが「ボルツ」だったんです。

今まで味わったことのない独特の風味、食感でした。トロミが少なくサラリとしていて、さまざまなスパイスの風味が香ばしく、刺激的で非常に高級感がありました。そして店の紹介文に「香辛料は南インドから直に取り寄せている」と言う一文を目にした時には、「間違いない。ボルツのカレーは、本場インドの味だ」と言う、確信のようなものが湧き上がって行ったのです。

もちろん「辛さ◯倍」にも惹かれました。インドのカレーはとにかく辛い!と聞いていたので、より辛いカレーをクリアして行くたびに、少しずつ「本場の味に近づいている」そんな思い込みが有ったのです。

大学を卒業し、渋谷の会社に務めるようになってからも、さっそく東急ハンズ近くにボルツを見つけ、通うようになりました。その渋谷の会社とは、今は無き「JCGL」と言う、日本初のCG映像プロダクションだったのですが、仕事の内容上、夜遅くなったり徹夜になったりすることが多く、ボルツはランチと言うより夕食として食べることが多かったように思います。

で、そんなある晩のことでした。やはり仕事が遅くなっため、同じプロジェクトに関わっていた女性を連れ、ボルツで夕食をとることにしたのです。

店に入り、運ばれて来たカレーを食べ始めていると、ふと、二人の女性が入店するのが見えました。一人はお金持ちっぽい小太りのマダム?で、もう一人は、浅黒く目鼻立ちのクッキリとした美女でした。彼女は「サリー」と言うのでしょうか、インドの民族衣装をまとっていました。そして二人は、僕たちのひとつ離れた席に座ったのです。

そのインド美女は日本語も多少分かるのか、マダムの「ここはね、東京で一番美味しいカレー屋さんよ」と話しかけている声が聞こえました。

しかし、間もなく事件は起きるのです・・

彼女たちの前にカレーが運ばれたのですが、インド美人は、ひと口ふた口カレーを口にすると、何かが気に入らないらしく、小さく首を横に振り、手を止めてしまったのです。

それからウェイターを呼び、何やらしきりに話しかけるのです。マダムがそれを通訳すると、ウェイター君は困ったような顔をして店の奥へ行ってしまい、しばらくして今度は店長らしき男性が現れました。

インド美人は店長をじっと見据えると、マダムを介して質問攻めを始めました。聞こえた範囲では、「香辛料は何を使っているか?」とか「辛さは何でつけているのか?」と言うような内容だったようです。

他の客も思わず手を止めて注目するなか、店長さんは、それらの質問にうまく答えられない様子で、やがてしどろもどろになり、盛んに頭を下げて謝っている?ようでした。そのやり取りを見たマダムは、店長に「香辛料の使い方が気に入らないみたい。でも私は、ここの味がとっても好き」とかばっていたのですが・・

インド美人は、思うように答えを得られないことに諦めたのか、無言になって前を向きなおし、それきり二度とカレーに手をつけようとはしませんでした。

店の中は、騒動のせいで、すっかり冷え切った空気になっていました。にぎやかだった客たちの会話も途絶えがちで、僕も、何だか自分が恥をかいたような気分になって、残りのカレーを無理やり口に運び込んだような気がします。・・そしてその時、向かいの席に座っていた同僚の女性が、不機嫌そうに小声でひとこと、こう言ったのです。

「本物のインド人なんか連れて来るからだよ」

・・そうなんです。本物じゃなかったんです。本物のインド人に受け入れてもらえないボルツのカレーは、本物のインドの味じゃなかったと言うことなんです。

それからと言うもの、あまりボルツには行かなくなってしまいました。行けば、その時の気まずい雰囲気が蘇ってしまうのと、ボルツこそ本場インドの味と信じていたのが、かなり遠いモノだと分かってしまったからかも知れません。

・・そして、まさかあれが原因では無いでしょうが、あの騒動の時期を境に、少しずつボルツ人気にも翳りが見えて来たような気がするのです。


さて、ボルツから足が遠のいてしまった僕ですが、その数ヶ月後くらいだったでしょうか、ボルツに代わって、今度は「サムラート」に通い始めていました。渋谷のハンズ通りを歩いていると、とあるビルの前で、いきなりインド人っぽい男にビラを手渡されまして、見ると、そこには「インド料理サムラート」と書かれていたのです。

男に「店はどこ?」と尋ねると、ついて来いと手招きされ、ビルの奥へと案内されました。そしてエレベーターに乗るように言われ、6階(?だったと思う)まで無言のまま連れて行かれたのです。

一瞬「まさかヤバい店か?」と、不安が脳裏をよぎったのですが、着いて扉が開くと、香辛料の匂いが立ち込める、内装もインド風の、エスニック・ムード満載のちゃんとした店でした。店員はすべて浅黒い肌のインド人で、調理をしているのもインド人でした。

果たして僕は、そこで生まれて初めて「ナン」と言うものを食べることになるのです。ナンをカレーに浸して食べる・・、ナンの甘みと、カレーの辛味・酸味が絶妙でした。タンドリーチキンなるものも初めて食べました。それ以外のさまざまなエスニック惣菜類も食べました。それと食後のマサラ・チャイも・・、ミルクティーにまさかの香辛料が入っていて、カルチャーショックに打ちのめされました。

たぶん何度も通って、サムラートのメニューのほとんどを食べ尽くしたのではないでしょうか。そこまでしてようやく、僕の長年の夢?が果たされたように感じたのです。

「ここなら、本場インドの味だと言って間違いないだろう。何しろ本物のインド人が作ってるんだからな」


・・あれから二十数年、サムラートにもだんだんと行かなくなりました。今なら、わざわざ渋谷まで出向かなくても、あちこちの田舎町(郊外?)で、「本場のインド料理屋」を見つけることが出来るようになったから、そのことが大きかったと思います。

と、ようやく一安心?していたら、今年(2016)の1月に放送した、
「タモリ倶楽部・インド人がマジリスペクト!タンドール窯の父、高橋重雄」
の回で、とんでもない事実が発覚したのです。

番組に集まったインド人シェフ達が、皆そろって、「インド人は、ほとんどナンを食べない。日本に来て初めてナンを食べたインド人もいる」という驚くべき事実を、何気ない口調で話したのです。何しろ、あの物知りのタモリさんでさえ「エエーッ!?」と仰天したくらいですから、その衝撃度が分かろうと言うもんです。(詳しい内容は書き切れないので、ぜひネット検索してみてください)

もちろん僕も、テレビを見ながら驚きの声をあげましたよ。今度こそ本場のインド料理と信じていたのが、けっきょくは、日本人の味覚や好み、言うなれば「インド幻想」に合わせていた、と言うことだったわけですから・・

まあようするに、そんなに「本場の味」が食べたいんなら、日本でセコセコ・ジタバタせず、本場まで出かけて行って、じっくり味わって来いや!と言うことなんでしょうかね。



関連記事





  

コメント

このブログの人気の投稿

ショウヘイ・オオタニとロイ・ハブス

★今や、大谷翔平選手は、歴史を塗り替える大活躍! エンゼルス以外のMLB各球団は、2017年の「ショウヘイ・オオタニ争奪戦失敗」で、今更のように地団駄を踏んでいるそうです。シアトル・マリナーズもその一つで、ジェリー・ディポトGMは、当時、大谷選手のことを「ロイ・ハブス」と呼び「全力で獲りに行く!」と豪語していたそうです。 「ロイ・ハブス」とは?。 1984年公開の傑作野球映画「ナチュラル」の主人公の名前です。演じたのは ロバート・レッドフォード。で、そのヒーローを彷彿とさせると言うことで、オオタニ獲得のプロジェクトネーム、隠語で「ロイ・ハブス」と呼んでいたと言うことでしょうか。 なるほど、ロイ・ハブスは、映画ではピッチャーでもバッターでも行ける天才野球選手との設定で、僕も一瞬?ですが、「大谷くんはロイ・ハブスみたいだな」と思ったことは有りました。ただロイは、プロ入り直前に殺人未遂事件に巻き込まれ、一度はプロ入りを断念する悲運の天才でもあったので、大谷くんと重ねるのは「う〜む?」と思ったことも確かでした。 とは言え、僕にとって「ナチュラル」は、「フィールド・オブ・ドリームス 」「プリティ・リーグ」と並ぶ三大傑作野球映画なので、公開から30年以上過ぎた今も、「ロイ・ハブス」の名が、天才野球選手を象徴する言葉として使われていることに、嬉しさを感じたりもしたのです。 日本では、何かのヒット映画と抱き合わせで購入された作品で、公開された劇場もたった二館、すぐ終了する予定だったそうです。それが「面白い」と評判になり、宣伝広告も無し、人々のクチコミだけでロングラン大ヒットとなった、異色の野球映画だったんです。僕もその二館のウチのひとつで見ました。 ただし、今の若い人にとって「クチコミ」とは、TwitterなどSNSのことだそうで、ネットもスマホも無いあの時代、「クチコミ」が人から人への噂話しのことで、「口頭によるコミュニケーション」、略して「口コミ」とは到底「ありえない!」って事らしいですね。 それくらい映画「ナチュラル」には、物語としての「パワー」があったのだと思います。ちなみに、監督は「レインマン」で数々の受賞をした、バリー・レビンソン監督。 * 「ナチュラル」序盤のあらすじ * 1950年代?。片田舎の農場に生まれ育ったロイ・ハブスは、19歳の時、老スカウトにピッチャーの才...

「まゆゆ」引退・・

 ★「今ごろかよ!」って言われそうですが、元AKBの神セブンと呼ばれた一人、渡辺麻友さんが芸能界を引退しました。 昨年(2020)のことです。しかし、芸能界では大物タレントのコロナ死や自殺など、衝撃的なニュースが相次ぎ、ファン以外ではそれほど?話題にならなかったような気がします。しかし僕にとってはちょっと興味深い存在だったので、少し書いておこうかと思いました。 単刀直入に言うと、「音楽の価値観を一変させられた?」とでも言いましょうか、彼女が歌った一曲に、これまで培って来た音楽の感性を一撃で破壊されてしまった、そんな存在だったのです。(大袈裟か・・) かく言う僕は、もともと若い頃はアイドルと言うモノには興味がありませんでした。自分で言うのもナンですが、変わり者だったし、多少歌にも自信があったので、当時のヘタウマアイドル歌手はどうでもいい、と言うのが本音でした。 世間では「歌のうまいアイドル」として評判だった「松田聖子さん」でさえ、僕が聴いた限りでは微妙に音を外していて、それが気になってダメだったのです。 周囲の人たちは、その「説」を信じませんでしたが、彼女がアメリカ進出を試みた時、向こうのプロデューサーから「音程が外れている。このままだとアメリカでは通用しない」と、長期間のレッスンを受ける予定との芸能ニュースを見た時、ひとり「ほらね!」と思ったものでした。(ただし、帰国後は素晴らしい歌手に変貌していましたよ、念のため) では、そんなだった僕を、還暦近くなって、一変させてしまった一曲とは何かと言うと、「まゆゆ」が歌う、その名も「麻友のために」でした。 どうですか?。声質は典型的な舌足らずの「アイドル系ガールボイス」で、一見ヘタそうに聴こえるのですが、注意して聴くと、しっかり音を外さずに歌い切ってることが分かるのです。しかもサビの部分、低音からいきなり高音に飛ぶ高低差の激しい曲にもかかわらず、後半になってもしっかり音程を保ち続けている・・  かつてのアイドル嫌いの僕は、「AKB48」と言うのは、とりあえず可愛い女の子をたくさん集めて、一度に大勢で歌わせれば歌のマズさはごまかせるってやり方だ、と思っていました。なので、これを聴いた時、「あれっ?」と思ったんです。 「ちょっとこれ、ホントは、歌の上手い女の子なんじゃないの?」と興味が湧いたんです。音程があまりにフラット...

オレンジオイル活用

★これは本来、ギターなどの楽器に使われる、木材用汚れ落とし・艶だし・保湿の製品ですが、何気なく金属バットに使ってみたら、けっこう奇麗に汚れが落ちたんです。 もともと「シトラスクリーナー」なんて油落としも有るくらいで、オレンジ成分には油分やゴムを溶かす効果が有るんですよね。 それが、バットにこびり付いた軟球のゴムに効いたみたいなんです。白っぽい軟球痕が溶けて消え、軽く艶も出ました。 これはいいと言うことで、木製バットにも使ってみたのですが、こちらは、そこそこ奇麗にはなるものの、木目に入り込んで取れなかったり、ゴムがニスに食いついてしまうのか、金属ほどには滑らかになりませんでした。 特に古い汚れほど落ちにくいようです。化学変化を起こすからかも知れないですね。まあ、金属・木製に限らず、使用したその日に手入れをすることが肝心なんですが・・ 「オイル」とは言っても、とろみ?は有りますが、しっかり拭き取ればいつまでもベタベタすることは有りません。色は透き通ったオレンジ色、もちろん柑橘系の匂いがします。 売っているのは楽器屋さんで、主にギターコーナーに有ります(扱っていない店もある)。値段は¥1000くらいだったかな。どうでしょう、バットにこびり付いた軟球のゴム痕が気になる人は、一度試してみてはどうですか。 あっ、でも、ゴムを溶かす性質が有るので、ビヨンド系はどうですかね。コーティングしてあるので大丈夫だとは思いますが、裂け目が有ったりしたら、そこから入ってウレタンを溶かしてしまうんでしょうか。 それとも、ウレタンはゴムとは違って何とも無いんでしょうか。手元に無いので試せないですが、バットの汚れ落としって、けっこう大変なので、使えたら便利ですよね。    

SakuSaku(サクサク)

★「 SakuSaku 」とは、 TVK (テレビ神奈川)のローカル MTV 番組のことです。増田ジゴロウと名乗るぬいぐるみキャラクターと、シーズンごとに進行アシスタントの女の子を代えながら、もう 10 年以上続いているんじゃないですかね。 時間帯が早く、月〜金の朝 7:30 〜 8:00 くらいにやってます。なので、普通の学生や勤め人はあまり見れないのですが、再放送も随時やってるので、それで見る人も多いみたいです。 僕は、何故かこの、ちょっとバカバカしい感じが好きでよく見ています。司会の増田ジゴロウの声役の男が三鷹出身らしく、「田無タワー(ローカル FM などの電波塔で、僕のウチから数百メートルの場所にある)」の話しとか、そんなくだらない話題が出てくるところも面白いですね。 で、さらにこの番組の面白いところは、無名のゲストなどが呼ばれて出演すると、その後、どんどん売れて行ってしまうと言うところですね。最近売り出し中の木村カエラさんもその一人で、セブンティーンのモデルをやっていた関係で、番組のアシスタント役に抜擢され、その後あれよと言う間にメジャーになってしまいました。 あとは「一青窈さん」とか「クリスタルケイさん」とかもそんな感じで、この番組に出るようになったあとで有名になったってケースなんです。 何故なのか?。じつは時間帯が早いことから、徹夜明けの芸能人や CM ディレクター、テレビプロデューサーなどがけっこう見ているらしいのです。つまり芸能関係者の「アンテナ番組」になっているフシが有るのです。 だから、この番組を楽しみに見ている身としては、売れて行く過程を目の当たりにして、「へー・・」と感慨深く感じてしまうので、見てない人に対して、「彼ら(彼女ら)は、こういう所で頑張ってたんですよ、ここから有名になったんですよ」と、ついつい教えたくなってしまうのです。 そう言えば、テレビ埼玉か何かで、極楽とんぼがローカルのロケ番組に出てまして、「こんなに売れても、こう言うのに出るのか」と思って見ていたら、一緒に出ていたアイドル志望みたいな無名な女の子が、ロケに疲れたらしく、ふて腐れてリアクションしなくなっちゃたんです。 そうしたら、その子に極楽とんぼが「お前なあ、こう言う番組ちゃんとやらないとダメなんだぞ!」と、突っ込...

1「土手の上で、夢の中の約束」

★ Index 「意味のある偶然の一致 20.7~22.4」 2021年の春頃、 僕は一つの夢を見ます。ほぼ忘れかけていた人の夢と言 う、何の変哲もない出来事のはずでした。しかしそれは、その後、約一年間に渡って続く、「少し不思議な巡り合わせ」の、始まりの夢だったのです。 * ・・そこは何処かの土手で、芝生で覆われたなだらかな地面の上に、男女数人で座っています。僕の左隣りには小柄な若い女性が座っていて、まるで独り言のように話しかけて来るのです。 「あたしいま、風俗で働いてるの」 その言葉に、 僕は少なからずショックを受けていて、すぐには返事ができません。大学の学費を親に頼らず、全部バイトで稼ぐと言っていた彼女ですが、そこまでして・・とは思いませんでした。 返事が出来ず思いを巡らしていると、次に彼女はこんなことを言いました。 「歯が抜ける女の子はキライですか?」 その声に口元を見ると、あちこち抜けてしまった歯茎が見えていました。僕は愕然としながらも、それを悟られまいと明るく、 「だいじょうぶ。インプラントと言う手もあるよ」 と言いました。 僕の右隣りの女性も「そうそう、インプラント」と言ってくれて、それを聞いた僕は少し落ち着きを取り戻します。 何処か体が悪いんじゃないのか?と思ってもう一度見ると、 彼女は やはり顔色が悪いのです。おまけに 痩せていて、とにかく見すぼらしいのです。僕が覚えている 、明るく健康で弾けるような若さの彼女ではなくなっていました。 しかし・・ 「でも、だいじょうぶ、オレはずっと変わらないから」 そう言い切ってしまうと、さっきまでの動揺がウソのように晴れやかな気持ちになっていました。 ここまでに至る、彼女との出来事を思い出していたのです。美術大学で初めて言葉を交わした日・・、ローラー・スケートが共通の趣味だと分かった日・・、それから・・ 「オレはずっと変わらない」 僕の言葉が届いたのかどうか・・、 彼女はスッと立ち上がると、 「もう行かなくちゃ」と、 夕暮れ迫る土手の上を、小走りで何処かへ行って しまったのです。 ・・と、そこで目が覚めました。夢だったんです。 さらに 少しずつ意識がハッキリして来ると、その夢の中の彼女が、もうこの世にはいない人なのだと言うことも思い出していました。今からざっと37年 前、27歳 の若 さで亡くなってしまった人なので...

冷むぎ2008年夏分を買った

★もうすぐ「そば」や「冷むぎ」が美味しい季節になりますが、ウチではこれが定番ですね。 ずっと前、知り合いから分けてもらって食べたらとても美味しくて、毎夏、箱で買ってます。今年も注文したのが届きました。 山形の小さな(たぶん?)製麺所で、インターネットで調べても連絡先が分かる程度のお店なんですが、モノはいいと思います。 これを口にしてから他の有名な麺でも食べる気にならなくなりました。喉ごしがいいんです。滑らかでコシが有って粉っぽさがありません。 今は世の中的には「そうめん」の方が人気があるみたいですが、そうめんはあのプチプチ感がちょっと苦手で、やっぱり「冷むぎ」の方が好きですね。 ただ「そうめん人気」がこの製麺所にも影響したみたいで、2、3年前、麺がそうめんに似せてやや細めなってしまったんです。あの時はショックで、他の麺に替えようと思ったんですが、けっきょくこの麺以上に美味しい麺は見つかりませんでした。 まあ、ゆで上がりが早いし、ツユも絡みやすいので、これはこれでいいのかな、なんて思ってます。一輪¥200。食べ比べの好きな人はどうぞ。(「高級めん」と言う品名がダイレクトすぎてちょっと、ですが) 佐藤製麺所・山形県天童市大字寺津313-2 TEL・FAX:023-653-4590‎ その製麺所で「そば」も有ると言うので、今回試しに買ってみました。でも、別の製麺所が作っているものを委託販売しているみたいですね。 こちらはインターネットでも売られているし、そこそこ名の知れたモノみたいです。 これも美味しいです。乾麺と言うと、どうしてもボソボソと粉っぽくなりがちなのですが、これは乾麺とは思えない生麺に近いつるつるの舌触りに仕上がりますね。 値段がこちらも一輪¥200と、量からすると少し高めなんですが、それだけの価値は有ると思います。 どうもウチは「山形県産」の麺が性に合ってるようなんですが、じつは両親が秋田県出身で、秋田と言えば「稲庭うどん」なんですけどね・・。ダメなんです。「美味しんぼ」なんかで「最高のうどん」なんて紹介されて、喜んだ地元の親戚がたくさん送ってくれたのですが、どうしても馴染めませんでした。 あれはちょっと滑らか過ぎます。「つるつる」と言うよりは「ぬるぬる」していて、喉越しの手応えと言うか、「喉応え」が無いんですね。でも、そんなことを言ったら親戚がガッカリす...

iPhone7plusに買いかえた

★これまで使い続けて来た「iPhone5」ですが、老眼の進行により、とにかく文字が見えにくくなりまして、ついに画面サイズ5.5インチの「iPhone7plus」にかえることにしたのです。 結果、使い勝手すこぶる良好となりました。非常に見やすいですね。これならメールやLINEだけでなく、電子書籍も楽しめそうです。本は何冊かダウンロード購入していたのですが、iPhone5ではとてもじゃないが読む気になれませんでした。あと、漫画も何とかいけそうですね。 上の写真、右の小さいのは「iPhone5」です。下取り機種交換にすれば多少支払いが安くなるのですが、自転車用のナビには大きさがちょうどいいので、iPhone7plusをルータ代わりにして、デザリングでつないでナビとして使用することにしました。 今年は、iPhone発売10周年記念で、記念モデルが出るのでは?との噂もあるし、使用中だった「iPhone5」も、整備品(中古をオーバーホールして発売した製品)の割にはバッテリー状態がよく、まだ使えそうだったのですが、まあ、この辺が潮時かな?と言うことで、思い切って注文してみました。 それと、アメリカがトランプ大統領になったことでアップル社にも圧力がかけられ、「iPhoneをパーツから何から全部アメリカ国内で作れ!」って言い出したと聞き、もし本当にそうなったら、価格とかどうなるだろ?と、すこしだけ心配になった?ってことも有ります。たぶん価格は大幅に上がるだろうし、性能の安定性も失われるかも知れません。 まあ、トランプさんの暴君ぶりには、毎日のように世界中の人々が驚かされてますが、いったいこれから先どうなるんでしょう。 ・・と思っていたら、「イスラム圏7カ国からの入国を禁止」との大統領令に対し、米国各州の司法長官が違憲であると表明し、ついに裁判所が「一時的に効力を停止」との裁定を下しました。 このニュースを聞いて震えませんでしたか?。僕は震えましたね。さすが自由の国、「腐ってもアメリカ」。僕の好きなベースボールが生まれたその国では、法の番人は決して権力に屈しなかったと言うわけです。その姿を見せつけられ感動すら覚えましたよ。 これにはトランプ大統領、まあ怒ってましたけどね。「テロからアメリカを守るための大統領令だぞ。どこが悪い!」ですが、この発言に反感を持った市民からは、「憲法の勝利だ!...

WBCでキューバ選手、行方不明?

★さっきラジオでWBCの最新情報を聞きましたが、今日はキューバが全然練習をせず、何か騒ぎが起きているようです。どうも向こうに行ってるスポーツジャーナリストによれば、「選手の一部がいなくなったらしい」と言う怪情報が入っているそうです。 まあ、未確認情報なのでホントがどうかは分らんらしいです。でも、キューバ選手の亡命と言うのは、まったく有り得ないとは言えないだけに、ちょっと心配?ですよね。 もちろん亡命が心配と言うんじゃなく、まさかその影響で決勝戦が中止になるんじゃ?、って心配なわけですが・・・。とにかく、どうせ亡命するなら試合が終わってからにしてくれよ!って言いたいわけですね。 ・・どうにもこの大会は、アメリカは自分たちの形勢不利と見るや、組み合わせを意図的に変更してしまうし、韓国はケンカ腰で日本粉砕しか頭に無いし、キューバはスキあらば亡命しようと?目論んでいるし、本気で素晴らしい野球をしようとしているのは日本代表だけ?なんでしょうか? こうなったらホンキで、「向こう三十年は日本に手が出せない」そう言う野球を日本代表にしてもらいたいですね。    

Canon EFレンズ復活か?

 ★2020年も、とうとう新型コロナの恐怖の中、暮れようとしています。ウチは2018年に両親が相次いで亡くなったので、今年は二人の三回忌でもありました。 母の方は2月の下旬で、「屋形船でクラスター発生」のニュースが流れたころでした。その時は不気味に思いながらも予定通り行いました。が、父の方は10月の下旬、法事はまさに三密の宝庫?だと言うことになり、会食は中止、法要・墓参りもごく身内だけ済ませました。 そんなこんなで、「法事も遺品整理もひと段落ついたな」と言う感じだったのですが、最後にひとつ、父が大事にしていたカメラが残っていました。「Canon EOS kiss」のダブルズーム・キットです。 残念ながらこれは、オート・フォーカスながらもフィルム式で、さすがにフィルム・カメラはもう使わんなと思い、当初は下取りかオークションに出そうか?と思っていたのです。が、手に取って見ている内に、「レンズはまだ使えるんじゃないか?」ってことになり、調べてみたら、アダプターを介せばデジタル一眼にも流用可能だと言うことが分かりました。 ・・と言うことで、全部中古ですが買っちゃいました。「Canon ミラーレス一眼 EOS M100 ・レンズ EF-M15-45」。箱・説明書無しだが新品同様、とのショップのコメントを信じて購入したら、ホントに美品でした。説明書はダウンロード出来るので問題は有りません。 つぎに「Canon マウントアダプター」。写真右の輪っかみたいなやつです。これを間に挟むことにより、後ろの二つのEFレンズをMマウント・ボディに装着することが出来ます。 で、付けてみました。さすがに300mmは、・・ちょっと荷が重い感じがしますが、オートフォーカスはしっかり働いてくれてます。最新レンズよりは若干遅いかも知れないですが、通常の使い方では問題無いでしょう。 けっきょく約4万円の出費で、本体+ズームレンズ3本(15mm 〜 300mm)のシステムが出来上がりました。 右のカメラは父が所有していたEOSです。こっちの方がしっくりとは来ますね。 ・・じつはこれを買う時、僕が、店まで一緒について行ったんです。ある時、母親から、父がオート・フォーカスのカメラを近所の店で買おうとしている。まともな値段じゃもったいないから、安売りの店を教えてやってくれ、と頼まれたことがキッカケでした。...

ファンとは何だ!?

★巨人が阪神を猛追してまして、このまま逆転優勝すれば「メークレジェンド」なんてことになるそうです。レジェンド、伝説って意味でしょうか。 誰が言ったか知らないが、他チームのエースと4番とクローザーを一気に引き抜いて、伝説って、その、途方も無い金の力のことを言ってるんですかね。まあ、いいでしょう。それでこそ「巨人」ってもんです。 その巨人とほぼ互角に渡りあってる広島って、やっぱり僕が惚れただけのことは有るチームです。毎年エースと4番が抜けて行って、それでこの位置に来るチームですからね。今年は黒田と新井がいなくなって、スゲエ薄っぺらなチームになってしまうのかと思ったら、とんでもない。なんか逆に、死に物狂いの熱気を感じます。もちろん、それでこそ広島ってもんです。 ところで、今年の始め、どこかの新聞社が巨人ファンにアンケートを取ったとき、「金の力で選手を集めるのは良くない」と言う意見が70%に達したそうです。 「巨人ファンも変わって来たんだなあ」と感心したものですが、今ならどうなんでしょう。やっぱりこれだけ盛り上がってしまうと、そんな正義ぶってる場合じゃないかも知れないですね。まあ、それでこそ「巨人ファン」ってもんですが。 だけど、僕はときどき不思議に思うことが有ります。 「ファンとは、チームの何を愛しているのだろう」と・・・ たとえば、有り得ないことですが、今シーズン限りで、巨人と広島の全選手を総トレードして、打線も投手陣も完璧に入れ替わってしまったら、ファンは、どちらのチームを応援するのでしょう。 そう考えると、ファンとは、選手たちに惚れていたのか、それとも球団を愛していたのか、分からなくなりませんか? 「さて、どっちを応援します?」 この疑問の答えは、ぜひとも、巨人ファンに聞いてみたい。