★「今ごろかよ!」って言われそうですが、元AKBの神セブンと呼ばれた一人、渡辺麻友さんが芸能界を引退しました。
昨年(2020)のことです。しかし、芸能界では大物タレントのコロナ死や自殺など、衝撃的なニュースが相次ぎ、ファン以外ではそれほど?話題にならなかったような気がします。しかし僕にとってはちょっと興味深い存在だったので、少し書いておこうかと思いました。
単刀直入に言うと、「音楽の価値観を一変させられた?」とでも言いましょうか、彼女が歌った一曲に、これまで培って来た音楽の感性を一撃で破壊されてしまった、そんな存在だったのです。(大袈裟か・・)
かく言う僕は、もともと若い頃はアイドルと言うモノには興味がありませんでした。自分で言うのもナンですが、変わり者だったし、多少歌にも自信があったので、当時のヘタウマアイドル歌手はどうでもいい、と言うのが本音でした。
世間では「歌のうまいアイドル」として評判だった「松田聖子さん」でさえ、僕が聴いた限りでは微妙に音を外していて、それが気になってダメだったのです。
周囲の人たちは、その「説」を信じませんでしたが、彼女がアメリカ進出を試みた時、向こうのプロデューサーから「音程が外れている。このままだとアメリカでは通用しない」と、長期間のレッスンを受ける予定との芸能ニュースを見た時、ひとり「ほらね!」と思ったものでした。(ただし、帰国後は素晴らしい歌手に変貌していましたよ、念のため)
では、そんなだった僕を、還暦近くなって、一変させてしまった一曲とは何かと言うと、「まゆゆ」が歌う、その名も「麻友のために」でした。
とにかく、もっと「まゆゆ」の歌を聴いてみたいと調べてみたら、この曲はどうやら「渡り廊下走り隊」と言うAKBの選抜ユニット、たぶん歌の上手な少女たちを集めた、その中の一人として歌っているらしい、ってところに行き着きました。で、さっそくアルバムを手に入れ聴いてみたのです。
すると、「麻友のために」以上にビックリした曲がありました。それがこのフォーク・ダンス調の「アッカンベー橋」と言う曲です。
僕が幼いころの音楽と言えば「歌謡曲」。美空ひばりや村田英雄の歌が最初に接した音楽でした(当時は演歌も歌謡曲のカテゴリー)。やがて中学では、吉田拓郎や加川良などフォーク・ソングに惹かれ、そして頂点はビートルズ。高校になるとガロ、ユーミン、オフコースと言ったニューミュジックに魅せられました。
それだけでは飽き足らず。ジャズやフュージョン・・、そして高額なオーディオ装置にも凝り出すと、「最高のサウンド」を求めて、音楽の頂点?クラッシックにも手を染め、毎日毎日、飽きることなく音の渦の中に没入することになるのです。
そうして得た音楽の知識や、どんな小さな音も聞き分ける繊細な聴覚や感受性を身に付け、時には高飛車に、上から目線で、友人たちに自分がどれほど音楽やサウンドに精通しているか、エラそうに能書きを垂れて回る、なんて、今にして思えば、じつに愚かしい事をしでかして行ったんです。
そんな、高みに上り詰めたつもりの自分の価値観、自慢の音楽的感性が、アッカンベー橋を聴いた一瞬に、物凄い破壊力でガラガラと粉砕されてしまったのです。
「何んだこりゃあ!?。・・面白い!。面白すぎる!」
けっきょく繰り返し何度も動画を見てしまいました。で、何度も見ても気持ち悪い!、でも面白い!。で、だんだんその「キモ面白い」が快感になって行く!。
・・それは年齢を重ねた自分の中の、高尚ではあるが、凝り固まった保守的な「価値観」が、音を立てて崩れてゆく瞬間でした。
たとえば、写実画を最高芸術と崇めて来た人々が、初めてモネの未完成のような「印象・日の出」を見た時の衝撃。あるいは「リンゴや水差し」を描くのが「静物画」と思い込んでいた人々が、アンディ・ウォーホルの「キャンベルスープ」や「バドワイザー」の空き缶の絵を見せられた時の衝撃のような・・?
それからと言うもの、あえて「キモ面白い」アイドル系音楽を探すようになって行きました。「でんぱ組」とか「私立恵比寿中学」だとか・・
すると2013年、またも衝撃的な曲に出会いました。NHK-BSの「アニサマ」で見た「七森中☆ごらく部」の「ゆりゆらららゆるゆり大事件・夏祭りバージョン」です。(アニサマとは?「Animelo Summer Live」の略で、毎年埼玉アリーナで行われる、恐らく日本最大のアニメソング・コンサート)
残念ながらこの動画はアニサマでは有りません。これだとその時の衝撃は伝わりにくいんです。NHK-BSで見たアニサマ、埼玉アリーナ37000人の大観衆の前で、彼女らが演じたこの曲の異形、異様さは、とうてい伝わらないでしょう。彼女らは同じステージで「逆転イッパツマン」の主題歌も歌ったのですが、それもかなり異様でした。
いわゆる「子供向けアニメソング」を、巨大なホールの大観衆の前で大真面目に歌うと言う、そのギャップが異様で、キモ面白いんです。彼女らのこの歌にもスゴい衝撃を受けまして、録画して何度も見返しました。
で、それ以降も同様の「衝撃」を求めて、毎年NHKで放送されるアニサマを録画して見続けたのですが、残念ながら、だんだんとつまらなくなって行ったんです。
アニメが子供だけのモノではなくなると、テーマ曲も大人の鑑賞に耐えうる本格的な曲が多くなって行きました。すると、アニサマはその異様さを失い、ごく普通のロックコンサートになってしまったんです。・・で、アニメファンの盛り上がりとは裏腹に、僕にとっては「ありきたりのモノ」でしかなくなり、一気に興醒めして行きました。
ロックバンドって言うのは、ヘビメタにしろパンクにしろ、もっと最近のモノでも、だいだい似通ったファッションで、似たようなメイクで髪型で、似たような音を出して・・と言う、一見アナーキーぶっている割には、ガチガチ保守的な「様式美の芸能」なんですよね。その後「まゆゆ」さんはAKBを卒業、女優転身を試みたようですが、ドラマの視聴率が低調で意気消沈したとのウワサも聞きました。引退理由は「健康上の理由」とか・・。できれば、もう少しアイドル歌手「まゆゆ」の歌を聴きたかったんですが、まあ今どき、ソロのアイドル歌手ってのも難しいんでしょうね。
・・と言うことで、自分が感じた「価値観の破壊」がどこまで伝わったのか、少々不安ではありますが・・、でなければ、いい歳して急にアイドルにのめったオジさん?と言うだけになってしまうので。
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