★1960年代から70年代にかけて、日本では学園紛争が相次ぎ、多くの若い学生と若い機動隊員とが衝突して血を流しました。この様子を見て憂いた、ある有名企業の社長さんが、各界の有識者たちを集め、ある提案をしたそうです。
「こんなことになったのは、しっかりと教育が行き届かなかったためだ。もっと幼い頃から、正しい知識を与える必要がある」
そして、早期教育の必要性を訴え、様々な教育機関に働きかけました。これが後に流行することになる、「塾通い」や「英才教育」の始まりです。ただ残念なことに、この頃はまだまだ、「人間の脳」の本当の仕組みが分かってはいなかったんです。
「頭の良い子が立派な人間に育つ」と、彼らは信じていたようですが、じつは「感情豊かな心」と「発達した知能」とは、脳の別々の分野が司るものだったんです。ほとんどの人々がそれには気づかず、子供達は否応なしに、膨大な「知識」を詰め込まれることになったんです。
そして時代が進み、事件が起こり始めます。少年たちが次々と人々を殺し始めたのです。しかも、自分でもハッキリとは動機が分からないまま・・。周囲の大人達は驚き、みなこう言うのです。「あんな頭のいい子が・・、なぜ?」
脳の重大な働きが分かってきたのは、ここ十数年のことだと言います。特に「右脳と左脳」の役割の違いです。人間にとって最も大切な「心」とは、「右脳」から発生するものだと言うことが分かって来ました。そして「左脳」は、主に知識や情報を処理するために有るのだと言うこともです。
ですから、幼い子供にいくら「正しい知識」を叩き込んでも、育つのは「左脳」ばかりで、心を発生させる「右脳」はなかなか育たないことになります。それどころか、左脳が異常に発達すると、溢れ出す情報を逃すまいと、右脳が言わば「仮想メモリー」のような形で肩代わりをするようになるのです。
そうなると、右脳が本来司るはずの「豊かな心」の発達は遅れます。そうなった後で、いくら「命の大切さ」や「思いやりの心」を教えても、「知識」として左脳に入力されるだけで、感受性としての「思いやり」は欠落してしまうわけです。
その結果、子供たちは少しずつ人間らしい気持ちを失い、次なる、大人たちが理解出来ない世代へと進化(?)して行くことになります。
・・と言うのが、最近になって脳科学で分かって来たことみたいです。まあ「英才教育」をやろうとした人々も、悪気があってやったわけじゃありません。「極端まで行ってみて始めて真実を学習する」と言う、人類が一度は通らねばならない道だったのかも知れません。
しかし、この道を「しょうがない」と、このまま突き進んで行くしかないのか、それとも修正して行く別な道もあるのか、それは簡単には言えないことだと思います。
でもあの頃、荒れる学生運動を見て「早期教育の必要性」に考えが至ったように、昨今の凶悪少年犯罪を見て、誰かが、何らかの手当をしなければいけないはずです。
「ゆとり教育」って、その右脳発達のために有るべき、修正の道だったはずなんですが、構想に欠陥が有ったのか、どうやら「失敗」と言うことになったようです。ですが、それがホントに失敗だったのか、それとも遠い将来、少しずつ現れて来るはずの成功の始まりだったのか、じつは、誰にも分かってはいないのです。
そうりゃあそうです。あの当時だって、「英才教育」が、人間の脳をこれほど圧迫するものだとは、誰にも予測できなかったんですからね。
(参・少なくとも「円周率」に関しては、生徒減少を恐れた塾業界のねじ曲げた解釈によるネガティブ・キャンペーンだったことが判明しています)
*参考記事「早期教育はムダだった?」*
幼児への早期教育はムダだった 思考力低下、日本語習得に影響も?
もぐもぐニュース 2014年5月14日 23時21分 (2014年5月15日 08時23分 更新)より転載。
こんな時代だからこそ、子どもたちにはしっかり勉強して、将来食うに困るようにならないで欲しい、そう思っている親御さんも多いはず。それで幼児のうちから読み書き計算を習わせる、早期教育に励んでいる人もいるのでは?
しかし、4月23日に英国デイリー・メールが伝えたところによれば、英国ケンブリッジ大学から「早期教育は時間のムダ」とする研究が発表されている。
同大学のデビッド·ホワイトブレッド教授によれば、2歳~6歳の子供たちは親とブロック遊びをしたりと遊ぶ方がいいという。「親と一緒に過ごす時間が多い子供たちほど、危機的状況を克服することができる」とのことなのだ。
読み取り、書き込み、算法の基礎教育を3Rsというのだが、教授はそれよりも親との交流のなかで幼児が問題解決能力と自己制御が可能になる方が、はるかに重要だと説いている。
早期教育には日本国内でもいまだに議論をよぶものであり、たとえば早期英語の教育は母語習得を遅らせ、思考力を低下をもたらすと訴える声もあるのだ。
幼児のうちから勉強させたいというのも親の愛情なのだろうが、しっかりと時間を一緒に過ごすのも間違いなく愛情なのだ。
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