★今年(2019)のNHK紅白歌合戦に、AI技術で音声を合成された「美空ひばりさん」が復活出場するそうです。
この制作過程は9月に NHKスペシャルのドキュメンタリーとして放送されたし、つい先日もNHKの音楽番組「うたコン」でも披露されたので、聴いた人も多いはず。僕も実際に聴かせてもらいまして、その再現技術の素晴らしさに「とうとうここまで来たのだなあ・・」と言う感慨を覚えました。
ただあえて言うなら、美空ひばりさん独特の高音部のシャウト(こぶし?)が見られず、柔らかい歌い方に終始していたのが少し物足りなかった。曲調が穏やかなバラードだったのでそうなったのか、シャウトがまだうまく再現できず楽曲の方を操作したのか?は、残念ながら不明でした。
とは言え「新しい時代が来た」と言うことだけはハッキリしました。「うたコン」では音声のみで、ひばりさんに見立てたドレス人形を若手歌手たちが囲む、と言う演出でしたが、紅白ではどんな風になるのか?。「初音ミク」のようにバーチャル映像付きで登場させたら、これは面白いことになると思うんですが・・?
そう言えば、「AI美空ひばり」の技術は、「初音ミク」と同じYAMAHAが開発した音声合成システム「VOCALOID(ボーカロイド)」を応用して作られたのだそうです。初音ミクの時は、「へー」とは思ったけど、声はやっぱりロボット臭くて、まだまだかな言う感じでした。ですが「AI美空ひばり」では、ほぼ人間の肉声だったんです。スゴイなと思いました。ついにここまで来たのかと・・
同時に、「YAMAHA」と言う企業に改めて感心しました。僕らは普段、あまりこの会社を気に留めていない気がするんです。「TOYOTA」は今年世界何位になったとか、「SONY」の復活は何処まで来たのか?とか、報道でもそっちの方が重要視されている感じです。
ですが、「YAMAHA」の方がスゴくないですか?。ふと思いついただけでも「楽器」「オーディオ」「オートバイ」、その他スポーツ用品など、気がつけば、広範囲に渡ってヒット商品を世に送り出しているんです。
かつて、あらゆる音楽、バンドのキーボードとして世界中を席巻した、デジタル・シンセサイザー「DX-7」なんてのも記憶に焼きついているし、「ショパン国際ピアノ・コンクール」では、これはピアニストのコンクールであると同時に、演奏家がどのピアノを選ぶのか、ピアノ・メーカーの競い合いでも有るのですが、そこに「YAMAHA」は、スタインウェイなどと並び、堂々ベスト5に食い込んでいるし・・
かく言う私も随分お世話になって来ました。オーディオ・ブームの時には、1本30kgもあるスピーカー「YAMAHA・NS-1000X」を手に入れ、部屋中を揺さぶるような重低音と壮大な音空間に包み込まれて感動しましたし、アコースティック・ギターも昨年、評判のいい「YAMAHA・LL16 ARE」を購入、マーチンに似た、鈴の鳴るようなキラッキラの高音に酔いしれています。
仕事の面でも、一回だけなのですが、今から何十年も前に「YAMAHA100周年記念プロモーション・ビデオ制作」の打ち合わせで、YAMAHAの関係者にお会いしたことが有ります。正確には「ビデオ制作前のプレゼンの打ち合わせ」です。相手は男性と女性の二名で、年の頃は・・、たぶん両者とも三十歳前後ではなかったかと思われます。
それが何年頃の話しだったかは、ほとんど記憶が薄れて分からないんですが、ネットで調べてみると、どうやら1988年頃のことだったと分かって来ました。「YAMAHA100周年」が2002年?あたりなので、まだようやく企画が持ち上がった、くらいの時期でしょうか?
その打ち合わせで、本題の会議が終わり、コーヒーを飲みながら雑談をしていた時のことでした。相手の女性の方が、「いまちょっと、考えてることがあって・・」と、そのアイデアを語りだしたのです。
それは、「駅の出発のベルを、メロディに変えたい」と言うことでした。雑談で他言してしまうくらいなので、恐らくプロジェクトどころか企画案にもなっていない、ホントに思い付きの段階だったのでしょう。
彼女は楽しげに続けました。
「大きな駅では、いろんな路線が乗り入れてるでしょ?。路線ごとにメロディを変えれば、どの電車が出発するか分かるし、駅ごとにご当地ソングのメロディを流せば、その駅の特徴にもなると思うんですよ」
その話しを聞きながらも、僕は「面白そうですねえ」と言って笑顔を作るだけで、その時の彼女の本気度は分かっていなかったんです。しかし・・
・・その打ち合わせが有ってから、一年後、いや二年後だったでしょうか?。ある日、僕は新宿駅のホームに立ったまま動けなくなってしまったのです。新宿駅のベルの音が、メロディに変わっていたのです。
「いつの間に変わったんだろう」
僕は電車に乗りもせず、何度も何度も、確かめるようにメロディを聴き続けました。
「やっぱり、路線ごとに違うのか?」
そして、こう思ったんです。
「ついにやったなあ。あれは、夢じゃなかったんだ・・」
夢を夢で終わらせず、どんどん企画にして提出し、実現し、商品にしてしまう。・・これが「ヤマハ魂」とでも言うんでしょうか?。もちろん彼女の力だけでなく、YAMAHAと言う企業の懐の深さも有ってのことですが。
・・あれから実に三十年以上の時が流れ、今度は「AI美空ひばり」の登場と言うわけです。これは誰が見た「夢」だったんでしょう。それが誰であれ、やはりここにもYAMAHAの技術、初音ミクを産み出した「夢見る力」が注ぎ込まれていた、と言うことは確かです。
「すごいな」と思うと同時に、あの彼女のことを思い出していました。かつて日本中の駅のベルをメロディに変えてしまったあの彼女は、今はどうしているでしょう?。もしずっとヤマハに勤めていたとしても、そろそろ定年・・?。どっちにしろ現場はすっかり世代交代しているでしょうし・・
ただ、彼女はいったいどんな気持ちで「AI美空ひばり」を聴いたのか、それをちょっと聞いてみたい気がするのです。
(*ところで、美空ひばり・AI歌唱曲「あれから」は、CD及び配信による発売も決定だそうです)
この制作過程は9月に NHKスペシャルのドキュメンタリーとして放送されたし、つい先日もNHKの音楽番組「うたコン」でも披露されたので、聴いた人も多いはず。僕も実際に聴かせてもらいまして、その再現技術の素晴らしさに「とうとうここまで来たのだなあ・・」と言う感慨を覚えました。
ただあえて言うなら、美空ひばりさん独特の高音部のシャウト(こぶし?)が見られず、柔らかい歌い方に終始していたのが少し物足りなかった。曲調が穏やかなバラードだったのでそうなったのか、シャウトがまだうまく再現できず楽曲の方を操作したのか?は、残念ながら不明でした。
とは言え「新しい時代が来た」と言うことだけはハッキリしました。「うたコン」では音声のみで、ひばりさんに見立てたドレス人形を若手歌手たちが囲む、と言う演出でしたが、紅白ではどんな風になるのか?。「初音ミク」のようにバーチャル映像付きで登場させたら、これは面白いことになると思うんですが・・?
そう言えば、「AI美空ひばり」の技術は、「初音ミク」と同じYAMAHAが開発した音声合成システム「VOCALOID(ボーカロイド)」を応用して作られたのだそうです。初音ミクの時は、「へー」とは思ったけど、声はやっぱりロボット臭くて、まだまだかな言う感じでした。ですが「AI美空ひばり」では、ほぼ人間の肉声だったんです。スゴイなと思いました。ついにここまで来たのかと・・
同時に、「YAMAHA」と言う企業に改めて感心しました。僕らは普段、あまりこの会社を気に留めていない気がするんです。「TOYOTA」は今年世界何位になったとか、「SONY」の復活は何処まで来たのか?とか、報道でもそっちの方が重要視されている感じです。
ですが、「YAMAHA」の方がスゴくないですか?。ふと思いついただけでも「楽器」「オーディオ」「オートバイ」、その他スポーツ用品など、気がつけば、広範囲に渡ってヒット商品を世に送り出しているんです。
かつて、あらゆる音楽、バンドのキーボードとして世界中を席巻した、デジタル・シンセサイザー「DX-7」なんてのも記憶に焼きついているし、「ショパン国際ピアノ・コンクール」では、これはピアニストのコンクールであると同時に、演奏家がどのピアノを選ぶのか、ピアノ・メーカーの競い合いでも有るのですが、そこに「YAMAHA」は、スタインウェイなどと並び、堂々ベスト5に食い込んでいるし・・
かく言う私も随分お世話になって来ました。オーディオ・ブームの時には、1本30kgもあるスピーカー「YAMAHA・NS-1000X」を手に入れ、部屋中を揺さぶるような重低音と壮大な音空間に包み込まれて感動しましたし、アコースティック・ギターも昨年、評判のいい「YAMAHA・LL16 ARE」を購入、マーチンに似た、鈴の鳴るようなキラッキラの高音に酔いしれています。
仕事の面でも、一回だけなのですが、今から何十年も前に「YAMAHA100周年記念プロモーション・ビデオ制作」の打ち合わせで、YAMAHAの関係者にお会いしたことが有ります。正確には「ビデオ制作前のプレゼンの打ち合わせ」です。相手は男性と女性の二名で、年の頃は・・、たぶん両者とも三十歳前後ではなかったかと思われます。
それが何年頃の話しだったかは、ほとんど記憶が薄れて分からないんですが、ネットで調べてみると、どうやら1988年頃のことだったと分かって来ました。「YAMAHA100周年」が2002年?あたりなので、まだようやく企画が持ち上がった、くらいの時期でしょうか?
その打ち合わせで、本題の会議が終わり、コーヒーを飲みながら雑談をしていた時のことでした。相手の女性の方が、「いまちょっと、考えてることがあって・・」と、そのアイデアを語りだしたのです。
それは、「駅の出発のベルを、メロディに変えたい」と言うことでした。雑談で他言してしまうくらいなので、恐らくプロジェクトどころか企画案にもなっていない、ホントに思い付きの段階だったのでしょう。
彼女は楽しげに続けました。
「大きな駅では、いろんな路線が乗り入れてるでしょ?。路線ごとにメロディを変えれば、どの電車が出発するか分かるし、駅ごとにご当地ソングのメロディを流せば、その駅の特徴にもなると思うんですよ」
その話しを聞きながらも、僕は「面白そうですねえ」と言って笑顔を作るだけで、その時の彼女の本気度は分かっていなかったんです。しかし・・
・・その打ち合わせが有ってから、一年後、いや二年後だったでしょうか?。ある日、僕は新宿駅のホームに立ったまま動けなくなってしまったのです。新宿駅のベルの音が、メロディに変わっていたのです。
「いつの間に変わったんだろう」
僕は電車に乗りもせず、何度も何度も、確かめるようにメロディを聴き続けました。
「やっぱり、路線ごとに違うのか?」
そして、こう思ったんです。
「ついにやったなあ。あれは、夢じゃなかったんだ・・」
夢を夢で終わらせず、どんどん企画にして提出し、実現し、商品にしてしまう。・・これが「ヤマハ魂」とでも言うんでしょうか?。もちろん彼女の力だけでなく、YAMAHAと言う企業の懐の深さも有ってのことですが。
・・あれから実に三十年以上の時が流れ、今度は「AI美空ひばり」の登場と言うわけです。これは誰が見た「夢」だったんでしょう。それが誰であれ、やはりここにもYAMAHAの技術、初音ミクを産み出した「夢見る力」が注ぎ込まれていた、と言うことは確かです。
「すごいな」と思うと同時に、あの彼女のことを思い出していました。かつて日本中の駅のベルをメロディに変えてしまったあの彼女は、今はどうしているでしょう?。もしずっとヤマハに勤めていたとしても、そろそろ定年・・?。どっちにしろ現場はすっかり世代交代しているでしょうし・・
ただ、彼女はいったいどんな気持ちで「AI美空ひばり」を聴いたのか、それをちょっと聞いてみたい気がするのです。
(*ところで、美空ひばり・AI歌唱曲「あれから」は、CD及び配信による発売も決定だそうです)
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